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放課後等デイサービスや児童発達支援、生活介護、入所施設。利用者を預かっている時間帯に地震が起きたら、その場にいる職員だけで数時間から場合によっては一晩をしのぐことになります。家庭の防災とは前提が違い、必要なものの量も種類も変わります。
2026年8月23日の茨城県南部の地震は深夜2時でしたが、これが平日の日中だったらと考えると、備蓄の見直しを先延ばしにはできません。この記事では、福祉・介護の現場で最低限そろえておきたいものを、チェックリストの形で整理します。
施設の備蓄が家庭と違う3つの前提
1. 人数が読めない
その日の利用者数、送迎の途中で戻れなくなった子、迎えに来られない保護者、帰宅困難になった職員。家庭のように「4人分」と決め打ちができません。定員+職員数を基準に、1.2倍程度を見ておくのが現実的です。
2. 医療的ケアや服薬が絡む
経管栄養、吸引、てんかんの頓服。電源が要るケアがあるかどうかで、備えるべきものが根本から変わります。ここは一般的な防災リストには載っていない部分なので、施設ごとに個別に洗い出す必要があります。
3. 待つ時間が長くなりやすい
全員のお迎えが済むまで職員は帰れません。子どもを落ち着かせながら、保護者と連絡を取り、記録を残す。この「待つ時間」を想定した備え(明かり・トイレ・退屈しのぎ・連絡手段)が、施設では特に効きます。
【チェックリスト1】命に直結するもの
- 飲料水:1人1日3リットル×3日分(定員+職員数で計算)
- 非常食:3日分。刻み・とろみ・アレルギー対応が必要な利用者の分は別枠で確保
- 携帯トイレ:1人1日5回×3日分。子どもは回数が多いので多めに
- 常備薬・頓服:預かっている薬のリストと保管場所を1枚にまとめる
- 救急セット:三角巾・止血用ガーゼ・ハサミ・使い捨て手袋
- 担架または搬送シート(自力歩行が難しい利用者がいる場合)
【チェックリスト2】停電したときに必要なもの
施設は自宅よりも電気に依存しています。エレベーター、自動ドア、電動ベッド、吸引器、記録用のPC。まずは「電気が止まると何が止まるか」を書き出すところから始めます。
- ポータブル電源:医療的ケア機器がある施設は必須。容量は使用機器の消費電力から逆算
- LEDランタン:各部屋に1つ以上。手持ちライトだと職員の手がふさがります
- ヘッドライト:職員人数分。両手が空くことが介助では決定的に重要です
- 乾電池:規格をそろえて多めに
- 電池式ラジオ:館内の情報源として1台
- 拡声器またはホイッスル:停電時は館内放送が使えません
【チェックリスト3】断水したときに必要なもの
- 携帯トイレ・簡易トイレ(洋式便器にかぶせるタイプが扱いやすい)
- おむつ・パッド:普段の使用量の3日分
- 清拭タオル(大判):入浴ができない期間の清潔保持に
- 手指消毒液・使い捨て手袋:感染症対策は断水時ほど重要になります
- 防臭袋:使用済みおむつと汚物の保管に。においは職員と利用者の消耗に直結します
- 給水タンク(キャスター付き):10リットルの水は10kg。運搬手段まで考えておく
【チェックリスト4】利用者を落ち着かせるためのもの
ここが施設の備蓄で最も見落とされる部分です。特に発達に特性のある子どもにとって、いつもと違う環境と大きな音は強いストレスになります。パニックが起きると、職員は避難や連絡の作業ができなくなります。
- イヤーマフ・耳栓:音に敏感な利用者向け。日頃から使い慣れているものを
- 個別のカームダウンスペースを作る道具(パーテーション、大きめの布)
- 静かに遊べるもの:塗り絵、シール、感覚遊びのおもちゃ、パズル
- 使い慣れたおやつ:普段から食べているものが最も安心につながります
- 絵カード・コミュニケーションボード:口頭指示が通りにくい状況で使えます
- 毛布・タオルケット:保温と、囲われている安心感の両方に効きます
【チェックリスト5】情報と記録
- 緊急連絡先一覧(紙):サーバーやクラウドが見られない前提で紙を用意
- 利用者個別カード:氏名・生年月日・服薬・アレルギー・かかりつけ医・特性・保護者連絡先
- 引き渡し記録用紙:誰が誰に何時に引き渡したかを残す。後日必ず必要になります
- 油性ペンとバインダー:手が汚れていても書けて、濡れても消えない
- モバイルバッテリー:職員のスマホが連絡手段になります
- 防災用ホワイトボード:安否と所在をその場で共有する
備蓄と同じくらい大事な3つの決めごと
引き渡しのルールを先に決める
誰まで引き渡してよいか、身元をどう確認するか、保護者が来られない場合はどうするか。これが決まっていないと、混乱の中でその場の判断を迫られます。年度はじめに保護者に確認して、書面で残しておくのが確実です。
送迎中に被災した場合の行動を決める
車内に何を積んでおくか(水・簡易トイレ・毛布・ライト・連絡先一覧)、どこへ向かうか(施設に戻るのか、近い避難所か)。送迎は施設の防災計画で最も抜けやすいところです。
備蓄の点検日を年間予定に入れる
9月1日の防災の日と、年度末。この2回を点検日として年間行事予定に組み込んでしまうと、賞味期限切れの備蓄という一番もったいない状態を避けられます。
まとめ
施設の防災備蓄は、家庭のリストを人数分に掛け算しただけでは足りません。医療的ケア、感覚過敏、引き渡し、送迎。この4つの視点を足したときに、初めて現場で使える備蓄になります。
全部を一度にそろえる必要はありません。まずは「明かり」「トイレ」「利用者を落ち着かせる道具」の3つから始めてみてください。この3つがあるだけで、職員が動ける時間が確実に増えます。
※この記事は一般的な防災情報と福祉現場の運営実務をもとにまとめたものです。指定基準や自治体の指導内容は事業種別・地域によって異なります。非常災害対策計画や避難確保計画の作成にあたっては、必ず所管の自治体の指示をご確認ください。

